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映画『アサシン クリード』レビュー:エデンの林檎とは何なんだ!????

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全世界で人気の同名ゲームシリーズを、マイケル・ファスベンダー主演で映画化した『アサシン クリード』のレビューです。遺伝子操作によって祖先の記憶を追体験することができる主人公が、歴史の闇で繰り広げられてきた戦いを通して人類の歴史に秘められた秘密を知る。監督は『マクベス』のジャスティン・カーゼル。

『アサシン クリード』

日本公開2017年3月3日/アクション/115分

監督:ジャスティン・カーゼル

本:マイケル・レスリー、アダム・クーパー、ビル・コラージュ

出演:マイケル・ファスベンダー、マリオン・コティアール、ジェレミー・アイアンアズ、ブレンダン・グリーソン、シャーロット・ランプリング

『アサシン クリード』レビュー

『マクベス』で古典文学に挑んだジャスティン・カーゼル監督、マイケル・ファスベンダー、マリオン・コティアールの3人が時間を開けずに再結集して挑むのは人気ゲームの『アサシン クリード』の映画化。原作ゲームではプレイヤーは「アサシン教団」と呼ばれる秘密結社に所属する暗殺者として、世界中の人々をマインドコントロールし支配しようとする「テンプル騎士団」に対抗するために、彼らの暗殺を行う。また世界観の特色として、アニムスと呼ばれる遺伝子記憶を追体験する機器を通して、プレイヤーは現在と過去を療法を体験することができる。

アサシン教団、テンプル騎士団、アニムス、アブスターゴ社、エデンの林檎など物語世界を象徴するアイテムが数多く登場し、映画版『アサシン クリード』は原作ゲームの世界観に肉薄していることがよく「わかる」。きっと原作ゲームをやり込んだ経験のあるファンには、ちょっとした風景や会話の中にも、制作者側の熱意や意図が読み取れるのだろう。一見するとその価値がわからない、それでいて徹底的に作り込まれた設定を見るに、かなり凝った作品だということもわかる。

意味深なセリフの数々や、クローズアップ撮影されることで何か意味があるのだろうと推測できる劇中のアイテム。

それが実際に何を意味するのかゲーム未経験者にはわからないが、どうやら重要なものだということは何となく理解できてしまう。

しかし劇中「何か大変なことが起こっているようだ」ということは理解できても、物語の核心にはなかなか追いつけない。そして鑑賞している途中から自分がストーリー理解から置き去りされていることに気がついてしまう。他の観客にはきっと理解できていることが自分には把握できていないということが物語の進行具合と自分の理解度を比較すれば明らかになってしまうのだ。

そして、置き去りになった

マイケル・ファスベンダー演じるのは死刑囚のカラム・リンチ。過去に父親が母親を殺すという事件に巻き込まれた経験のある彼は、その後殺人者となり死刑を宣告される。しかし死刑執行後、目覚めたリンチは不思議な施設の中で目を覚ます。そこアニムスという装置を使った実験に参加させられたリンチは、突然1492年のスペインに生きた祖先アギラールが経験した時間を追体験することになる。こうしてリンチは歴史の闇の中で繰り広げられてきたアサシン教団とテンプル騎士団との抗争を知り、そして戦いを終わらせるために歴史に封印されたはずの秘宝エデンの林檎を巡る戦いへと加わる。

こうしてあらすじを書き出しても、おそらく原作ゲーム未経験者にはこの独特の世界観を実感として想像することは難しいだろう。世界観の説明が不十分というわけではなく、冒頭からかなりの文字数を使って設定の紹介が行われる。しかし物語の核心ともいうべき「なぜ彼らは戦うのか」という部分が不明瞭で、そこから派生して「エデンの林檎って何?」とか「だからアニムスって何?」という言葉で説明済みの設定までもが説得力を失ってしまっている。

このような特殊な世界観を舞台にした物語というのは、どうやって自然にその特殊さを映像やセリフなどを駆使して観客に伝えるのかという問題から逃げることはできない。物語の特異な世界観を知ってもらうために説明パートを多く設けた結果、「傍流豊かにして本流スッカスカ」となる現象は昨今でも多く確認されており、例えば『スーサイド・スクワッド』や『ウォークラフト』などはまさにその好例だろう。

説明しなきゃ伝わらない(かもしれない)けど、説明しすぎると本筋まで手が回らない。

CGIの進歩によって非現実の映像化が格段に容易になってしまったことで、このジレンマは脚本のハードルというより、むしろ、全体を見渡すロードマップ上において作品の評価に直結する要素にまでなった。特に「あわよくば続編も」という下心を隠し持ったゲームやアニメの映画化作品第1作目にとって、いかに作品の世界観を伝えるのかという問題はシリーズの可否にも繋がる。

しかも本作の場合、観客のコア層となる原作ファンには世界観の説明が一切不必要というツイストも加わる。

結果的に本作は原作ゲームファンをターゲットとした作品になることを選んだ。おかげでゲーム未体験者の私は最初から最後まで物語に追いつくことができなかった。なんかよくわからないものが出てきて、わからないうちに話は進み、さっきのわからないものの正体がやっとわかった頃には、また別のよくわからないものが登場していて、、、という繰り返しのまま終わっていく。

アサシンの一人として『浮き草たち』『グリーンルーム』のカラム・ターナーが出演していたり、マイケル・ファスベンダーとブレンダン・グリーソンの親子設定が2作続いていたりすることに気を取られていると、さらにストーリーから置いていかれることになる。展開は早く進み、それなりに物語上の危機も演出されるので退屈するということもないが、そもそも物語に乗り込んでもいないから終盤に用意されている「ひねり」や「オチ」が全然響かない。

「へー、そうなんだ」で終わってしまう。

きっと原作ファンにとっては念願の実写化だったのだろうし、中世の街並み再現や高低差のあるアクションなど見応えは十分。しかも出演俳優たちは実力派ばかり。マリオン・コティアールは相変わらず男を試して断崖から飛ばせるし、実験で頭がやられて車椅子に乗るプロフェッサーXなマイケル・ファスとか見所には事欠かない。

が、やっぱり乗れない。

本作に限らず、原作のある物語を映画化する際に、従来のファン向けか新規の観客向けか、という二者択一に拍車が掛かっているように感じる。『ロード・オブ・ザ・リング』のような成功例を知っていれば尚更、観客に見えない線を引くような制作方針は感心できない。

その結果、原作に思い入れのない観客は途中からこう思ってしまう。

「エデンもリンゴもアサシンもテンプラも、正直、どうでもいい」と。

『アサシン クリード』:

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